AIは「作るもの」は分かる。でも「壊すな」は察してくれない。
ある会社の社内で使う業務ツールを、Claude Code(AIのコーディングアシスタント)に作らせています。
その中で、同じような失敗を、立て続けにふたつやらかしました。
一回目:「行の削除ボタンを増やして」と頼んだら、別の画面にあった削除ボタンが消えた。
二回目:「スマホで画面がぶれるから直して」と頼んだら、レイアウトは直ったけれど、月別の列の横スクロールが効かなくなった。
どちらに共通しているのは、私が「触ってほしくない」と言わなかったものが、壊れたということです。
「言わないことは触らないはず」という思い込み
職人さんに「流し台を直してください」と頼んで、ついでに風呂場を壊されることはありません。
頼んだ範囲だけ触って、他は置いておく。人間同士なら当たり前のことです。
だから私はAIにも、同じ期待をしていました。
「言わなかったことは、触らないはず」。
これが、最初の大きな思い込みでした。
失敗を振り返っていて、出会ったひとつの考え方
Anthropic(Claudeを作っている会社)が、AIと上手く付き合うために大切な力として、4つの問いを挙げています。頭文字がすべてDで始まるので「4D Framework」と呼ばれているものです。
砕くと、こんな感じです。
何を任せるか(Delegation)——この仕事、AIにやらせるべきか、自分でやるべきか?
どう伝えるか(Description)——AIに何をしてほしいか、ちゃんと言葉にできているか?
出てきたものをどう見極めるか(Discernment)——AIが返してきたもの、本当に大丈夫か?
その結果にどう責任を持つか(Diligence)——AIの出力を使ったことで起きたことに、どう向き合うか?
「プロンプトを書く」とよく言いますが、それはふたつ目の「どう伝えるか」だけの話です。その前後にも、みっつの問いがあります。
私が今回つまずいたのは、**「どう伝えるか」と「どう見極めるか」**のふたつでした。
「どう伝えるか」は、思っていたより深かった
最初は、「してほしいことを具体的に書けばいい」と思っていました。
欲しいアウトプット、作りたいもの。それが伝われば十分、と。
でも違いました。
最近のAIの推測能力は、本当に目覚ましいものがあります。文脈から気を回して、言わないことまで先回りしてくれます。大抵は良い方向に、思いもかけない処理をしてくれて助かるのですが——言わないことまでやり始めたとき、それが思わぬ方向に働くことがあります。
伝えるべきは、「これから作るもの」だけではありません。「今あって、壊してほしくないもの」も含めて、周りの状況ごと伝えることだったのです。
人間同士なら「周りを壊さない」は暗黙に了解されています。でもAIにはその暗黙がありません。だから、「言わなくても分かるでしょ」と思っていることほど、言葉にしなければなりません。
「伝える」と「見極める」は、交互にやる
もうひとつ、大事なことが見えてきました。
私はこれまで、「AIに頼む → 返ってきたものを使う」で終わっていました。
でも本当は、その間に「見極める」が入るはずで。
伝える(描いてほしい絵を説明する)
見極める(出てきた絵をちゃんと見る)
違っていたら、もう一度伝える(どう直してほしいか説明する)
今回の私は、最初の「伝える」が雑で、「見極める」も別の画面への影響まで見ていませんでした。ふたつ目の指示でも「スマホのこと」だけ伝えて、「PCでは変えないで」を言い忘れました。
「伝える↔見極める」の行き来が、まだ未熟だったということです。
指示の書き方を変えました
今はこう書くようにしています。
【症状】何が困っているか
【期待する状態】こうなってほしい
【必ず維持すること】← 今まで書いていなかった部分
【制約】どこまで触っていいか
「必ず維持すること」をひと行書くだけで、修正によって別のところが壊れることが、ずいぶん減りました。
これ、AIだけの話じゃないかもしれない
書きながら気づいたことがあります。
人にものを頼むとき、「これを壊さないで」と明言したことが、私にあっただろうか。
外注先に依頼するとき、「この部分は触らないで」と書き添えただろうか。
多くの場合、ほとんど言及しません。「まあ、常識で分かるでしょう」と思っています。
でも相手の「常識」は、自分の「常識」と同じとは限りません。経験が違えば、背景が違えば、「当然触らないこと」の定義は変わります。
AIとの会話で一番学んだこと
AIに「どう伝えるか」を丁寧にやる習慣を身につけると、人に対しても、自分が何を「当然」としていたかが見えてきます。
AIとの仕事を通じて一番学んだのは、プロンプトの書き方ではなくて、**自分がどれだけ多くを「言わずに済ませてきたか」**という事実だった気がします。
4つの問いは、AIを使いこなすための技術論に見えて、実は自分自身を知るための問いなのかもしれません。
AIに伝えようとする過程で、自分の中の「言葉にならない部分」と向き合う。それが、いちばん大事なことだったように思っています。
Anthropicの解説をわかりやすく解説してくれています。
日々、進化するためにとても役に立ちます。
この無料セミナーの中のルーブリック評価と、コーチングAIスキルは
Claude.aiを使っている人にはとても役に立つと思います。
https://online.toiee.jp/courses/take/level-up-ai-fluency/lessons/74506758-1



